2011年3月11日14時46分に東北で発生した大地震のあまりの惨状に言葉を失いました。 今までに戦争の経験もなく、大きな天災も経験したことがないものにとって、想像を超える悲惨なことが一瞬にしておきて、あまりに多くの人々の日常を奪い去ってしまった自然の猛威に、ただ呆然とするばかりでした。さらに追い討ちをかけるように、原子力発電所でこれまでに経験のない大規模な事故が発生し、これからどれくらい危険な状況になるのか予測がつかない不安を突きつけられました。 地球が恐ろしいほど破壊的なエネルギーを内蔵していることを忘れて日常生活をしている一方で、節度ある電気の使い方をせずにきたことへの戒めが、このような惨事となってしまいました。被災地の惨状を見る度、言いようもない無常観に襲われて、哀しくなりながら気持ちが彷徨ってしまっていました。 でも壊滅的な被害といわれながら、被災地の方々は着実に復旧に動き出し、援助してくださる多くの力によって、目に見えて回復しつつあることに驚きと尊敬の念を憶えます。 地震の時私は外出先におり、そこで今まで経験したことのない大きな揺れに恐怖を感じましたが、一緒にいてくれた人々のお陰で心強く居ることができました。少し落ち着いてからギャラリーを目指し歩きだし、夕方近くに到着しました。展示している作品のうち6〜7点が倒れたり斜めになったりしていて、ぞっとしました。恐る恐る確かめると、破損していたのはガラスの細身の水差しが2点だけで、ほかのものは破損を免れていて本当に幸運でした。 ほとんど全てを破壊された夥しい瓦礫の山をテレビで見続けていると、被災地でない人々も美術・工芸品などの壊れものに空しさを感じ否定的な気分になることが多く、さらにこれからの生活環境への不安から、美を味わうことや感性を遊ばせる世界のものを、多くの人が自粛してしまうことがとても残念です。(そのせいか三春堂を覗いてくださる方もさらに少なくなっています。) 本来、このような未曾有の惨事の時こそ、美しいものを愛でて豊かな気持ちを醸しだすことが大切なのではと思います。そこから生まれた豊かな心が、人への優しさに繋がっていくような気がします。 各地のお花見が震災に対する配慮で自粛となってしまいましたが、被災地に思いを馳せ、東北の産物を味わい産地に経済協力するお花見があったら良かったのにと思いました。大騒ぎはできないけれど、被災地と心が繋がる思い出深いお花見になったのではないでしょうか。きっと桜もいつもの年より美しく感じることができたかもしれません。自粛の呼びかけは、被災された方にも、また助けることのできる立場の人からも可能性を奪ってしまったように思います。自粛ではなく、被災地の助けとなる提案をしてくれたらお互いが元気になれる機会になったのではと思えてなりません。 今のように悲観的な気分に落ち込みやすい時に、三春堂は何をお見せしたら良いのかしらと考えた末、駒井哲郎さんの小品「小鳥」を飾りました。(銅版画・シュガーアクアチント、ディープエッチング「人それを呼んで反歌という」より) このふんわりした小鳥をみていると、優しい気持ちになって、そしてほんの少し上に羽ばたくことができそうな気持ちになります。 多くの方が、ほっとあたたかい気持ちになりますように。 イトイさんの 「東日本大地震のこと」 三春堂ギャラリー・安藤 三春 2011. 4. 7 - お知らせ - お客さまによる「三春堂コレクション」写真は、継続展示しています。 追加もしていますので、ぜひお出かけください。(4月30日までの予定)
by miharu-ando
| 2011-04-12 04:52
| 日常
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